ロケリポートVol.3 メインの秋
(2000年10月7日〜18日)



落ち葉の中に赤いマイツルソウの実
10月7日(土)から18日(水)の12日間、ニューイングランドの 紅葉が最も鮮やかな時期に、メイン州で、最後のロケが行われました。 リポーターは、今回もスチール写真担当の森本二太郎さんです。
紅葉のメインの森へ

メインの空に鮮やかなカエデの紅葉
映画「センス・オブ・ワンダー」のロケも、いよいよ最終ステージへ。
10月8日、いつものようにボストンからレンタカーでメイン州へと向かいました。 北上するにつれて木々の色づきが目立つようになり、紅葉の季節が足早に進んでいることがうかがえます。とくにメイン州に入ってからは、カエデの赤、アスペンやカンバ類の黄色が鮮やかさを加え、撮影への期待に心がはやるのを抑えがたいほどでした。 途中から空模様が怪しくなり、夜の9時をだいぶ過ぎて別荘に着く頃には、冷たい雨が降り出していました。真っ暗な雨の森でひっそり佇む別荘にたどり着いた我々の心には、緊張や不安ではなく、我が家にたどり着いたような、ほっとする懐かしさがあふれていました。みんな長旅の疲れもいとわずかいがいしく動いて、明日からの撮影に臨む備えにいそしみました。

新たなメインの自然を発見

紅葉したブルーベリーの荒野
翌日午前中は高い位置から森を撮影するための足場を組んだり、 薪を割ったり、撮影と生活の下ごしらえ。午後は紅葉のロケハンに 出かけました。
翌10日は、星空の撮影に適する場所を求めて、まず車で3時間余りの ところにあるアカディア国立公園へ。走るにつれて小高い丘陵が目に つきはじめ、まっ平らなアメリカで久々に見る「山」の姿に大喜び。 これから行こうとしているキャディラック山への期待がますます大きくな ってきました。ところがやがて山地に雪が見え始め、さすがに心配に なって公園事務所に電話で問い合わせをすると、雪で道路が閉鎖されているとのこと。 止む無く引き返し、次の候補地に赴いたのですが、ここが予想をまったく超えた素晴らしいところだったのです。のどかな田園地帯を緩やかに上り詰めたところに、突然開けた荒涼たる原野。それが一面、西に傾いた陽を受けて燃え上がるように染まっているのです。なんと、見渡す限り、鮮やかに紅葉した丈の低いブルーベリーが密集していました。後で知ったのですが通称Blueberry−Barren(ブルーベリーしか生えない不毛の地、との意味)と言われているそうです。これまで海辺と森ばかりだったメイン州のイメージに、まったく新しい印象的なシーンが加えられました。

クランクアップ

撮影の合間にくつろぐスタッフ
この後は、紅葉した明るい森での撮影、水辺や草原、トウヒの森などでの濃やかな秋の気配の撮影、日の出や日没さらには満月の海での朗読シーン......等々、ロケは順調に進められ、一日の仕事が終わった後のスタッフの表情も、疲れのなかにも明るい開放感の漂う日が多くなりました。上遠さんも、足掛け2年この映画作りに心血をそそいでこられたのがいよいよ大詰めを迎えることになって、さすがに感慨胸に迫るものがおありのようでした。 メイン州でのロケの最後となった10月15日は、朝から暖かく穏やかな日和でした。秋の気配を撮り終えた後、上遠さんのインタビューシーンを撮影。最後の一言が終わるか終わらないうちに、まるで手配をしてあったように、頭上から何枚もの落ち葉がはらはらと舞い散ってきました。上遠さんの顔がぱっと輝いて、これまでに見たことのないなごやかな表情になったと、カメラを回していた堀田さんも感慨深げでした。 この夜は手作りハンバーグとお赤飯でクランクアップのお祝い。食後、上遠さんがマイクを持って、一人一人にインタビュー。最後の最後、上遠さんの声が詰まって、言葉がとぎれとぎれになってしまいました。みんなみんな、なごやかに打ち解けた団欒が夜の更けるまで続きました。こんなにくつろいで語り合ったのは、昨年9月のロケ入り以来初めてのことでした。

お別れ

最後の朝は、胸にこたえるお別れとなりました。この別荘とも、この森とも、この海辺とも、そしてすっかり親しくなった近所の牧師さん夫妻とも。 これからは、監督の小泉さんに大仕事が残されたわけです。編集、音響、音楽と相呼応して、素晴らしい「センス・オブ・ワンダー」の映画が誕生する日を、祈る思いで待ちたいと思います。

(リポーター:森本二太郎/スチール写真担当)